薄毛はいつの世でも、男性につきまとう悩みだろう。AGA(男性型脱毛症)の治療薬が日本で開発されて以来、病院での相談件数は増えてきている。そこで、大阪・梅田でAGA専門治療を行う「医療法人翠奏会 脇坂クリニック大阪」の脇坂長興院長に、AGA治療の現状について話を聞いた。
脇坂院長のもとには連日、多くの患者が訪れる。来院しての相談件数は、過去8年間でのべ24万人を超えた。 「来院の動機は、友達や家族に薄毛を指摘されて、という方が大半ですね。テレビCM等のおかげもあって、世間に治療が認知されてきました」と脇坂院長。そもそもAGAとは、Androgenetic Alopeciaの略で、男性の額から頭頂部にかけての髪の毛が薄くなる症 状のこと。脇坂院長は、「AGAによる抜け毛のメカニズムは、前頭部から頭頂部の毛根で、男性ホルモン(テストステロン)がⅡ型5α―還元酵素によって、DHTに変化します。DHTは、テストステロンの約3~100倍の強さがあるとも言われている成分で、それが毛根を萎縮させ、抜け毛につながることが分かっています。つまり、DHTを作る酵素を持っているかどうか、DHTに対して敏感かどうか、という2つの体質が、薄毛になりやすさに大きく影響します」と説明する。 このことから同院の治療は、Ⅱ型5α―還元酵素を阻害するためにフィナステリドという薬を投与し、抜け毛の進行を遅らせた上で、発毛治療に取り掛かる。「AGAを進行させる要因は、睡眠不足、喫煙、無理なダイエットなどですが、ストレスも大敵です。髪の毛も体の一部だということを再認識し、心身とも健康でいることをまずは目指してほしい」
AGAは治療ができるという時代の到来で、薄毛に悩む世の中の男性は明るい未来を感じられるようになった。それでも、「髪の毛の悩みは、あくまで患者さん自身の問題。治療の終着点や、そこまでの経路を見つけるため、患者さんに寄り添い、一緒に〝作戦会議〟をするのが私たち頭髪専門クリニックの仕事なのです」と脇坂院長が話すとおり、患者自身が〝治療によってどうなりたいのか?〟という意思をしっかり持ち、自らの選択で治療を進めてほしい。
◆同院で治療を受ける森山晃行さん(42)は20代半ばから頭髪が気になり出していたという。特に対策はしていなかったというが、8年前にテレビの情報番組でAGA治療を知り、脇坂院長を訪ねた。
治療はまずカウンセリングや頭部写真撮影、診察、血液検査などを行い、それぞれに合った治療方針を確認したうえでスタート。「治療すれば(抜け毛、薄毛は)改善されると信じていました。脇坂院長も気さくに、はっきりと治療の説明をしてくれるので、不安な気持ちはありませんでした」。
今では薄毛で悩む知人に治療を紹介しているという森山さんだが、「以前のような人前に出ることのストレスが減ったのが、何よりもうれしい」と語るように、日々の生活も前向きになれた様子。AGA治療の本質は、薄毛によるストレスから解放されるところにあるのかもしれない。